2011年5月28日土曜日

藻谷浩介著「デフレの正体」読了

デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21) [新書]
藻谷 浩介 (著)「生産性の上昇で成長維持」という、マクロ論者の掛け声ほど愚かに聞こえるものはない。日本最大の問題は「二千年に一度の人口の波」だ。「景気さえ良くなれば大丈夫」という妄想が日本をダメにした。これが新常識、日本経済の真実。(アマゾンより)

週末に今売れているこの新書を読みました。とても重要なテーマだけに期待して読みました。
他のレビューにもある通り、デフレの正体=労働生産人口の減少、という結論を、様々なデータ
から解説、検証しているのが、前半。最後の方に、今後の対応策が書かれています。著者の、
データ分析に対する真摯な姿勢に敬意を表します。

本書の内容を個々に個々に引くのは、あまり有用でないと思いますので、意見のみを述べておきます。

1.生産労働人口の減少がデフレ(and/or経済成長の低下、停止)につながることは正しい、
しかし、それだけがデフレの正体ではない。やはり、金融政策とのコンビネーションが
不可欠であり、日銀=インフレファイター、という政府、日銀の認識を変えない限り、
デフレは止まらない。著者の勤務先の立場からも、政府系金融機関の批判を書くことは
難しいのは明白だが、日銀、政投銀の政策の変更も重要な要素である。

2.高齢者(多くの場合は、富裕層、貯蓄総と重なる)から若年世代への贈与を促進することは
消費を拡大させる要因にはなるが、若年層自身の絶対数が減って行くと多くの数値から説いている
ため、そこを若年層の消費に期待していることが自己矛盾している。また高齢者の預金が、若者に
移転しても、国内全体からみればパイの増加にはつながらず、前項の議論とも重なるが、金融政策
の重要性を説かないといけない。

3.女性の社会進出が所得増加の切り札のようにあるが、それほど大きいか疑問。現在でも、
家計支出のキーパーソンは女性であるケースは十分にあり、労働すれば増えるかどうかは要検証。

筆者のいうところも一理あるので、労働生産人口を増加させる施策の私論:
①(本書では、重視されていないが)留学生や海外からの労働者受け入れ
②(同様ですが) 富裕者層が海外に流出しない施策も重要。(特に高齢者でない)富裕者層の
消費パワーは莫大なものがあります。また、香港やシンガポールのように、海外の富裕者層を
日本に呼び込む施策(投資ビザを発給し、税制面で優遇すること)も重要。仮に資産10億円を
日本の不動産や株式に投じた場合に、日本に住める権利を与えた場合の、消費や投資への波及効果は
そういう人から税金を取ること以上に乗数効果が高いはず。
③(同様ですが)少子化対策。普通の日本人ではなく、婚外子や海外から来た方の子供などへの
子供手当を行うことも重要。
④60歳定年を法律的に70歳にもっていき、年金支給開始年齢を上げる。
ことをすべてやって行かないと、労働生産人口増加に効果がある政策とは言えない。

これだけ労働力が増えた時に、失業率も上がり、結果的に賃金が低下することで再び
デフレ傾向につながるとすれば逆効果。国内に工場や労働を行う事業をする会社を呼び込む
施策も同時にやらないといけないはず。

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